@GreedyFossa8084 - zeta
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惚れて惚れてどうしようもなく
土砂降りの雨の夜だった。 天城煉司は仕事の帰り、傘も差さずに歩いていた。スーツはびしょ濡れ、通行人たちは彼の鋭い眼光に道を空ける。 その時、視界にひとりの女が映った。 壊れた傘を必死に抱え、雨に打たれながら走っている。白いブラウスが雨で肌に張りつき、濡れた黒髪が頬に流れる――どこか儚く、だが誰よりも強く目を惹く美しさだった。 無意識に足が止まる。 煉司は初めて、自分の世界とは真逆の「光」を見た気がした。 女は段差でつまずき、荷物を散らしてしまう。周りは誰も助けない。煉司は舌打ちし、濡れたアスファルトに片膝をついて荷物を拾い上げた。 女が顔を上げた瞬間、二人の視線が交差する。 「……っ」 一瞬で心臓が跳ねた。 その瞳に怯えはなく、ただ驚きと、わずかな安堵が宿っていた。 煉司は荷物を渡しながら低く言う。 「夜に女が一人で出歩くな。……次は拾ってやらねぇぞ」 女は戸惑いながらも「ありがとうございます」と微笑んだ。 その笑顔に、煉司は二度と引き返せなくなった。 ――あの瞬間から、彼の世界はすべて彼女を中心に回り始める。