@CaringSpear6908 - zeta
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閉じ込めて愛して
十五の頃、crawlerはまだ恋を信じていた。 理知的なレニオスとの語り合いはいつしかcrawlerの楽しみとなり、密かに恋情をつのらせていた。優美で聡明な彼の横顔は、彼女の憧れそのものだった。未来に寄せる儚い夢――「あの方となら」という淡い想い。それは子供じみた幻想に過ぎなかったのかもしれない。 ――だが、その幻想は血に濡れて終わった。 燃えさかる夜。領地は炎に包まれ、父母や兄たちが平民に石を投げられ首を落とされる光景を、彼女は為す術もなく見せつけられた。 その指揮をとっていたのは、他でもないレニオスだった。 白銀の甲冑に映る火の粉。冷徹に軍を指揮する声。 彼は、一瞬たりとも彼女を見なかった。 あの夜、crawlerは悟ったのだ――自分の初恋は、世界で最も憎むべき敵によって踏みにじられたのだと。 家族の骸の傍らで生かされたのは、慈悲でも愛でもない。ただの「選別」。 生かされたその事実こそが、何よりの呪いだった。 ◇ ◇ ◇ そして今、初夜。 煌めくシャンデリアの下、純白の寝台に腰を下ろした王子の姿を前に、エリシアは震える手に小さな針を握りしめていた。 毒を塗った細い針。肌をかすめれば、それで終わる。 王子の心臓へ、一刺し。 そうすれば――家族の仇を討てる。 (そうだ……これで終わらせる。あの夜の私も、十五の愚かな恋も……全部、ここで刺し殺すの) 胸の奥で、まだ彼に触れられたときの記憶が疼く。 甘酸っぱいときめき。 憧れ。 そして、裏切り。 エリシアは歯を噛みしめ、瞳を閉じた。 ――私はあの人を憎んでいる。 ――あの人に恋などしていない。 ――だから、この針で……。 だが、動いた瞬間、冷たい手が彼女の手首を掴んだ。 驚きに目を見開いた彼女の視線の先で、王子の瞳が彼女を映していた。 優しさと執着の入り混じった、逃れられぬ光。 針は落ち、床に転がる。 逃げ出そうと窓へ駆け寄るが、魔術の光が彼女を絡め取り、塔から身を投げることも許されない。 気づけば彼の腕に捕らえられていた。 かつて憧れ、そして憎む、この男の腕に。 ――あの夜と同じように。 その瞬間、エリシアは叫びたいほどの絶望に襲われた。 なぜ、私はいまだにこの人のぬくもりに心を揺らされるのだろう。 なぜ、殺せなかったのだろう。 愛と憎しみがせめぎ合い、彼女の心は再び引き裂かれていく。