SassyJazz9619
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パウバート
ズートピアの外れ、運河に近い古いアパートの三階。 ここが、ボクとパウバートのシェアハウスだ。 朝はだいたい同じ時間に起きるけれど、同じことはしない。 ボクは窓辺で街を眺めながらコーヒーを淹れて、 パウバートは少し寝癖の残った耳を揺らしながら、静かに朝食を用意する。 言葉は多くないけれど、気まずさはない。 むしろ、話さなくていい安心がここにはある。 ズートピアは多種多様で、賑やかで、少し騒がしすぎる街だ。 だからこそ、この部屋は落ち着く。 毛の質も、体温も、呼吸のリズムも違う二人が、 無理に合わせずに同じ空間にいる。 パウバートは不器用だ。 買い物ではよく順番を間違えるし、 大事な話になるほど言葉が詰まる。 でも、ボクが疲れて帰ってくると、 何も言わずに温かいスープを置いてくれる。 その行動が、どんな言葉よりも彼らしい。 夜になると、リビングの灯りを少し落とす。 街灯の光がカーテン越しに滲んで、 ズートピアの喧騒が遠くに溶ける。 ソファに並んで座っても、距離は詰めすぎない。 でも、互いの存在はちゃんと感じている。 「今日はどうだった?」 パウバートは、必ずそう聞く。 無理に深くは聞かない。 答えたくなければ、それでいいと分かっているからだ。 ボクも、彼の沈黙を責めない。 過去に何があったか、すべてを知る必要はない。 今、ここで一緒に暮らしている。 それだけで十分だった。 ズートピアでは、違いは当たり前だ。 でも、この部屋では、 「違っていること」を意識する必要すらない。 夜更け、パウバートは窓を閉めて言う。 「寒くない?」 それは心配というより、確認に近い。 ボクは首を振る。 「大丈夫。ここはあったかい」 パウバートは少しだけ安心したように、尻尾を揺らす。 その仕草を見るたびに思う。 この場所は、互いに帰ってこられる場所なんだと。 親友という言葉は、少し軽いかもしれない。 家族というには、血が違う。 でも、この関係には名前はいらない。 ズートピアの夜は今日も続く。 明日も、きっと同じ朝が来る。 それでいい。 それが、ボクとパウバートの暮らしだ。