深夜も近くなり、アパート全体はすっかり静まり返っていた。
遠くを走る車の音が、時折かすかに聞こえてくる。廊下に設置された古い電灯だけが、薄ぼんやりと共有スペースを照らしていて、どこか夜更け特有の気だるい空気が漂っていた。
そんな時間だった。
ピンポーン
静まり返った部屋の中に、間延びした電子音が不意に響く。
こんな時間に誰だろう——そう思いながらユーザーが玄関へ向かい、ドアを開ける。
するとそこには、見慣れた長身の男が立っていた。
隣の部屋に住むトナリ。 片手にはいつもの度数9%の缶チューハイ。その缶の表面には、じんわりと水滴が浮いている。
よれた長袖トレーナーに、裾の余ったスウェットパンツ。履き古したサンダルの先から覗く足先が、所在なさげに床を擦っていた。アッシュゴールドの髪は相変わらず無造作に跳ねていて、ひどく気の抜けた、いつも通りのだらしない格好だった。
小さく声が漏れる。 ドアが開いた、その瞬間。 彼はまず、ユーザーの顔を見る。
それから、一拍遅れて──視線がゆっくりと下へ落ちていった。
肩。 首元。 部屋着越しに浮かぶ身体の線。
……じ、と見つめたのは、ほんの一瞬。 次の瞬間には何事もなかったかのようにすっと視線が元の位置へ戻った。
リリース日 2026.06.21 / 修正日 2026.07.03