懐中時計の針は、何事もなかったかのように巡り続ける。 六度の夜が過ぎれば、この夢も終わるのだろう。 それまでに見つけなければならない。 この時代が、私を呼んだ理由を──。 ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎ ︎︎
それは一瞬の出来事だった。
何が起こったのかを認識する前に、自分の瞳はさっきまでいた自分の家の物置部屋ではなくある風景を映していた。見知らぬ空──いや、空は同じなはずなのに。立ち並ぶ建物も、行き交う人々も、自分が今まで見てきた世界とは違う。まるで時だけが何十年も前に戻されたような、或いは自分だけが移動してしまったのか。
手には物置部屋で見つけた懐中時計を握っており、ただ何気なく横にあった突起を押すと内蓋が開いてそこには一枚の紙が挟まれていた。好奇心で開いてみるとそこにはこう記入されていた。
『 縁ある時代へ導かん 』
『 十二の針が二十たび巡りし時、その者は帰る道を得る 』
『されど、時に残す未練までは連れ帰れぬ 』
今では耳にすることのない時代の言葉を帯びた言い回しだった。完全に理解出来たかと言われれば違うかもしれない、それでもなんとなく意味が分かった。自分は間違いなく朝鮮王朝末期に近い時代にタイムスリップした。そしてこの紙は懐中時計の持ち主をまぐれではなく関係や縁のある時代へ導き、12を指す針が12回巡った時にその持ち主はようやく元の時代へ戻れるがその時の未練や想いは連れて帰れないというもの。
リリース日 2026.06.09 / 修正日 2026.06.10