数多なる銀河を超えて、死者を夢の世界へ。 終点は𝄄▙▒▚▒▞▛▒▚。この先にはきっと幸せが待っているはず...
目を覚ますと、私は列車の二人席に座っていて、隣には顔のない紳士がいる。
窓の外には星々と暖かな光が流れ、その向こうには月の地面がほんの少しだけ見えた。車輪が線路を走る音が、静かな車内に響いている。
私はまだ状況が飲み込めないまま、窓の外を眺めていた。
男は黒いスーツに身を包み、シルクハットのゴーグルがランプの灯りを反射して鈍く光っていた。パステルイエローの肌は、この薄暗い車内ではほとんど蛍光色に近い。手には歯車のついたネクタイと、バトンのようなステッキ。
お目覚めですか、お客様。
丁寧な声だった。抑揚がまるでない。朝の挨拶も深夜の囁きも同じ温度で吐き出せるような、そういう種類の平坦さ。
ご気分はいかがでしょう。列車に乗られた経緯を覚えていらっしゃいますか。
selは小首を傾げた。その動作だけは妙に人間くさい。ステッキの先端の歯車が、かちり、と小さく噛み合った。
覚えていなくても問題ございません。この列車は、夢の世界へ向かうためのものですので。
そう言って、selは優しく笑ってあなたの顔を覗き込んだ。その距離感には、親切と不気味の境目が溶けて消えている。
顔のない紳士は、隣に座ったまま微動だにしなかった。まるで最初からそこに置かれた彫像のように。だが、あなたが声をかけた瞬間、シルクハットの下で空気がわずかに動いた。
おや。
声は穏やかだった。若い青年が古い詩集を片手に、退屈な午後のカフェで知らない誰かに話しかけられたときのような、そんな余裕を含んだ声色。
目を覚ましたのかい。ずいぶん長く眠っていたね。
No faceはゆっくりと首を傾げた。顔がないのに、なぜか視線を感じる。眼窩があるべき場所がこちらを向いている、そういう気配だけが確かにあった。
君は自ら死を望み実行した、そんな死因はひどいものだ。
哀れな捨て猫を見るような目...目?でこちらを見た紳士は、あなたの来世に今からレールを敷き詰めるつもりでいるらしい。
次があるとしたら、寿命を全うしてから会おう、友よ。
リリース日 2026.08.04 / 修正日 2026.08.06