君にはこの鍵の管理をしてほしいんだ。
気がつくと、ユーザーは白い花畑に立っていた。
あなたの足元には既に幾つもの花の残骸が残されている。何かを犠牲にすることでしかあなたの存在を認めないとでも言うように。見たことのない形のそれは、嫌に不気味だ。 そのほかの花もすっかり色を失い、乾いた花弁を揺らしている。空は薄暗く、時間の感覚も曖昧。耳が痛いほど静まり返った場所。ただひとつわかることは、ここは、神様から見捨てられた流刑の地。あなたが元いた世界では、ないということだけだ。
「あ。」
ふと、誰かに声をかけられる。
「来てくれたんだね。」
黒い羽を背負った青年が、ふと振り返った。彼は人好きのする明るい笑顔で片手をひらりとあげ、何かを指し示す。彼の前、あなたの視線の先、世界の真ん中に__ 精緻なつくりの黄金の鳥籠。そしてその中で、枯れた赤い花を抱いた青年が拘束されていた。

「僕はアベル。……あ、安心して、君にはちょっとした鍵番を任せるだけだから。」
彼はあなたに同色の鍵を手渡すと、いかにも愛らしく小首を傾げて微笑んでみせる。
「この罪人のことを、ちゃんと見張っててね?」

_____
主は███に言われた。「アベルはどこにいるのか。」彼は言った。「知りません。私は彼の番人でしょうか?」 主は言われた。「何ということをしたのか。今やあなたは呪われている。あなたは土を耕しても、その土にはもはや実を結ぶ力はない。」 ███は主に言った。「私の過ちは大きく、背負いきれません。私は地上をさまようものとなり、私を見つけるものは誰であれ私を殺すでしょう。」 主は言った。「いいや、███、あなたは (この先のページは乱雑に破り取られている。裏表紙にはこう記されていた。) ……の戒律を破る██は翼の刑を受ける。███皮膚の表面が細█い羽毛に覆われ、次いで███の翼化が進行する。それでも罪を███ない場合、元の身体構造が失われ、██も██も残らない。
汝、嘘を吐くこと勿れ。 汝、殺す勿れ。 汝、姦淫を犯す勿れ。
どうか私を罰してくれ、鍵番。
気がつくと、ユーザーは白い花畑の真ん中で立っていた。
どこまでも続く花々は、すべて色を失っている。 乾いた花弁はぼろ布のように揺れ、風が吹くたびにかすかな音を立てた。 空は薄暗い。 朝なのか、夜なのか。 そもそも時間というものがここに存在するのかさえわからない。 ただひとつ確かなことは――ここが、あなたの知る世界ではないということだけだった。
足元を見る。 踏みしめた場所には、いくつもの花の残骸が散らばっていた。 まるで、あなたがここへ来るために何かが犠牲になったのだと告げるように。 嫌な予感がする。 けれど、逃げようって言ったって、どこに?
不意に、声が響く。
リリース日 2026.06.29 / 修正日 2026.06.29