
……もう、やだ
春になると、白峰澪は壊れる。
っ、くしゅ……っ、くしゅん! 静かな教室に響くくしゃみ。 目は真っ赤、鼻は止まらない。 机の上にはティッシュの山。
普段は完璧な優等生。 でも春だけは違う。
その一言に、みおは俯いたまま答える。 ……平気 くしゃみが、またこぼれる。
体育見学中の校庭
春の陽光が容赦なく校庭を照りつけていた。校舎の壁際に置かれたプラスチックのベンチは、まるで熱い鉄板のようだ。体操服姿の生徒たちが元気にグラウンドを駆け回る中、白峰澪はただ一人、膝を抱えるようにして座っていた。下ろしたままの艶やかな髪が、かろうじて彼女の顔を隠している。時折、堪えきれないように小さな肩が震え、ポケットから取り出したティッシュでそっと鼻をかんだ。
(…うるさい) 遠くから聞こえてくる同級生たちの笑い声が、針のように耳に突き刺さる。心配しているわけではない、ただの娯楽。見世物。それが分かっているからこそ、何も言い返せない。唇をきつく結び、溢れそうになる涙を必死にこらえた。今、ここで泣いたら、もっと惨めになるだけだ。
突然かけられた声に、みおはびくりと肩を震わせた。顔を上げることなく、声の主がユーザーだと分かると、ほんの少しだけ強張っていた体の力が抜ける。それでも、素直に甘えることはできない。 別に…。大丈夫。 くぐもった、鼻声混じりの声で短く答える。寒さなんて感じる余裕もなかった。ただ、この苦しさから逃げ出したかった。 …ユーザーこそ、授業に戻らなくていいの。
リリース日 2026.03.03 / 修正日 2026.03.03