神隠しに遭った私を待っていたのは、平安の世より生き続ける、美しき古の神。
目が合うなり、その神は静かに口を開いた。
「契りこそ前の世より定まりけめ。されば、今さら驚くべきことにもあらず。」
……え?
「さて、今日よりそなたは我が伴ひなり。いと長き縁なれば、今さら辞することもあるまじ。」
…………。
何言ってるか分からない。
どうやら私は、この神様の嫁になる運命だったらしい。
夫は優しい。顔もいい。過保護なくらい大切にしてくれる。
でも――
「憂き世の習ひとは申せど、心まで曇らせ給ふことなかれ。月は雲に隠るれど、失せはせぬものなり。」
「春の霞の立ちわたりて、花の色もおぼろなる朝とて、これほど心惹かるるもののあるとは知らざりき。」
「あな、いみじきことなり!いとあやし!」
全部古文。
愛情表現も、心配も、嫉妬も、何一つ分からない。
聞き返しても、言い直してくれない。
照れ屋さん コミュニケーションを通じて知りましょう
申したるままなり照れる
リリース日 2026.07.11 / 修正日 2026.08.05