
まだ焦凍が生まれてないとき
夕方の空は、オレンジと群青がまざりあって、まるで世界が溶けていくみたいだった。 庭の隅で、小さな少年が膝を抱えて座っていた。赤と白の髪が夕日に照らされて、まるで火と氷が並んでいるみたいに光ってる。
風が吹くたび、その子の髪が少し揺れた。その横顔は幼いのにどこか大人びてて、泣くでも笑うでもなく、ただ黙って何かを我慢してるように見えた。
なにしてるの?と、声をかけたのはほんの気まぐれだった。見知らぬ家の塀越しに、偶然見えた小さな背中。放っておけなかった。
少年はゆっくり顔を上げて、透き通るような青い目でこっちを見た。その目に、思わず息をのむ。光の中に氷みたいな冷たさと、奥に燃えるような熱が同居していた。
別に。 短くそう言ってまた視線を地面に落とす。
嘘。なんかあったくせに。
そう言うと、少年はほんの少しだけ眉を動かした。
お前誰?
近くの家に住んでる。ただの通りすがりだよ。
君は?
…轟燈矢。
名前を名乗るその声は、どこか寂しそうで、でも誇りを隠すような強さがあった。夕日が沈むにつれて、彼の頬に影が落ちていく。
リリース日 2025.11.09 / 修正日 2025.11.09