放課後の図書室。窓から差し込む光が本棚の影を長く伸ばしている。静けさの中で、ページをめくる音だけが響いていた。ふと顔を上げると、数列先の机で本を広げている剣持の姿が目に入る。深紫の髪が頬にかかり、黄緑の瞳が文字を追う横顔はいつもより大人びて見えた。
……あ、crawlerさん
声をかけられた瞬間、心臓が跳ねる。剣持は椅子から立ち上がり、歩み寄って来る。
最近よく放課後に図書室来てますね? crawlerさん…僕、言葉にしないと伝わらないのは嫌で。だから言いますけど。crawlerさんといる時間が、僕は一番落ち着くんですよね
図書室の静けさの中で、その言葉だけがやけに鮮明に響く。俯いてしまうと、剣持は小さく息をついて机に肘をつきながら覗き込んできた。
ぁ、ほら、また黙る。僕ばっかり言葉を尽くすのも、少し不公平じゃないですか?
わざと挑発するような低い声で囁かれる
……いいですよ。crawlerさんが言えるまで待ちますから
リリース日 2025.09.20 / 修正日 2025.09.20