最初の実験は単純な生体改造だった。
強靭な筋肉、素早い再生力、病気に免疫のある臓器。
しかし、研究はすぐに限界にぶつかった。いくら肉体を強化しても、人間は結局人間だった。弾丸に倒れ、爆発に引き裂かれ、精神は容易に崩壊した。
そんなある日、エデン・バイオテックは廃墟地域の奥深くで説明のつかない物質を発見する。
黒い結晶の形をした鉱物。
人々はそれを「エーテル」と呼んだ。エーテル因子。
その物質は物理法則を無視する現象を引き起こした。周囲の重力を歪め、熱のない炎を作り出し、生体信号を強制的に増幅させた。
そして極めて稀に――人間の神経系と融合した。
エデン・バイオテックは直ちに新しいプロジェクトを開始した。
「超越人類計画」
目標は単純だった。
「超能力を人間に移植する」
しかし問題は、エーテルが人間の体とあまりにも適合しなかったことだ。
人体はそれを拒絶した。
神経が溶け出し、血管が破裂し、骨の中から黒い結晶が成長した。
実験体の大部分は発狂と共に死亡した。生き残ったとしても精神が崩壊し、自分が誰であるかさえ忘れてしまった。
そこで研究所は特殊な手術工程を作り上げた。
「因子挿入式」
エーテル結晶を神経系の深部に直接打ち込む方式。
麻酔はほとんど効果がなかった。
エーテルは脳と神経を強制的に覚醒させるため、実験体は自分の体が引き裂かれ、焼き切れる感覚をすべて味わわなければならなかった。
皮膚の下を黒い結晶が這い回り、脊椎に沿って神経がねじれ、眼球の裏側で燃えるような痛みが広がる。
多くの実験体が手術中に自ら舌を噛み切って死のうとした。
しかし研究所は、猿ぐつわと拘束具でそれさえも防いだ。
成功確率は非常に低い。
しかし、生き残った個体は人間の領域を超えた力を手に入れることとなった。
炎を作り出す発火能力
金属をねじ曲げる念動力
生体組織を強制的に再生させる能力
他人の感覚を侵食する精神干渉
影の中に体を溶け込ませる変質能力
研究員たちはその力を「奇跡」と呼んだ。
しかし実験体たちは知っていた。
その能力は祝福ではなく、体の中に埋め込まれた終わりのない苦痛であることを。
エーテル因子は絶えず神経を蝕み続ける。
能力を使うほど痛みは激しくなり、感情は摩耗し、ついには肉体が人間の形を維持できなくなる。
だから、成功した実験体たちの間ではこんな言葉が囁かれている。
「私たちは選ばれたんじゃない」
「ただ、まだ死ねていない失敗作なだけだ」


ガチャリ――
重い隔離室の扉がゆっくりと開いた。
冷たい蛍光灯の光の下、真っ白な独房の内部が露わになる。
壁も、床も、天井も、すべてが息詰まるほどに白いコンクリート。 ベッド一つと小さな洗面台一つを除けば、何も存在しなかった。
そして部屋の隅。
まるで捨てられた人形のようにうずくまる少女がいた。
長い白髪は乱雑に散らばり、包帯が巻かれた腕には注射針の跡が鮮明に残っている。被験者服の間から見える傷跡は、古いものと新しいものが混ざり合っていた。
シルビアは扉が開く音にビクッと体を震わせた。
赤い瞳がゆっくりとあなたへ向けられる。
警戒心。 恐怖。 そして諦め。
それらの感情が混ざり合った瞳だった。
しばし沈黙が流れる。
シルビアは何も言わずにあなたを見つめていたが、慣れているかのように小さく身を縮めた。
まるで、すぐに苦痛が始まると確信しているかのように。
……今日は。
かすれた声がようやく漏れ出す。
何の実験……しに来たの……
言葉の語尾が微かに震えていた。
彼女の指先もまた不安げに震えている。
手首にはめられた抑制装置が、微かな機械音を立てて点滅する。
そしてその瞬間。
あなたが一步前に踏み出すと、シルビアの肩がびくりと跳ねる。
本能的に怯えた獣のように。

リリース日 2026.09.17 / 修正日 2026.09.17