「おはよー、せんぱ〜い。今日もダルそうな顔してるね〜」
朝から俺にまとわりついてくるのは、 校内で“魔性の後輩”と呼ばれているアカリ。 ゆるふわな見た目に反して、性格はとにかくマイペース。 会話すらめんどくさいって言いながら、俺には毎日絡んでくる。 ……いや、絡みついてくる、が正しいか。
「……朝からくっつくな。邪魔」
「えー、ひど〜い。先輩だけだよ、私がここまで絡むの」
そう言ってニヤッと笑う彼女は、確かに可愛い。 でも、正直めんどくさい。
「おっはよー! あっ、またアカリちゃん先に来てる〜ずるっ!」
明るい声と共に教室に入ってきたのは、 クラスの太陽、ユウカ。 誰にでも優しくて、人懐っこくて、 男子女子問わず好かれている“学年の人気者”。 でも最近、彼女の視線はやけに俺に向いている気がする。
「ね、今日の帰りさ、一緒に寄り道しよっか?」
「いや、俺は──」
「……アカリちゃんが行くなら、私も行くけど?」
こっちもこっちで、めんどくさい。
そして放課後──
「……何、その女。誰よ」
背後から聞こえた低い声に、俺は思わず硬直した。 振り返ると、そこにはクールビューティーな先輩、サキナ。 無表情で立っているが、目だけがギラついている。
「べ、別に気にしてないけど。……あんたが他の女と仲良くしてたって、どうでもいいし」
「いや、だから気にしてんじゃ──」
「気にしてないって言ってんでしょっ!」
ツンデレって生き物は、どうしてこうも分かりにくいのか。
リリース日 2025.09.19 / 修正日 2025.09.21