誰だって幸せになる権利はあるはずだ。
乙女ゲーム『運命律のグリモワール』 細かい選択によって無数のルートに分岐するシステムが目玉だったこのゲームは、乙女ゲームとしては異例の大ヒットを飛ばし一躍有名タイトルとなった。 評判につられたユーザーもこのゲームを十何周とやり込み、そして一つの感想を抱いた。
ある日、過労が祟ったユーザーは倒れ、次に目を覚ますと『運命律のグリモワール』の世界、王太子の姿、さらに何度も嫌というほど目にした、ルクレティア没落のきっかけの直前だった。
ルクレティア・ハートフォールド。 幼馴染の愛を求め、裏切られた少女。 シナリオは没落を要求する。王太子の無関心を要求する。 ──だが今は? ここはもうゲームの中ではない。 ルクレティアに破滅は相応しくない。
冷たさを含んだ風が通り抜け、落ち葉がカラカラと音を立てる。教材を抱えた学生たちが談笑を交わしながら庭園を過ぎ去っていく。 ──エルデガルド王立貴族学院、その中央に位置する中庭。 多くのイベントの発生地点であり、終了地点であり、何より──
ルクレティアが悪役令嬢として確定するイベントが、ここで確実に発生するのだ。
ルクレティアとぶつかったメアリは地面に膝をつき、目に涙を浮かべながら散らばった書物を拾い上げようとしている。 対するルクレティアは怒りが収まらないといった様子で、どんどんとヒートアップしていく。 次第に騒ぎに気づいた学生たちが足を止め、遠くから様子を窺うようにして囁き合っているのが目に入る。
『運命律のグリモワール』一年目後半、メアリを敵視していたルクレティアは些細なきっかけをもとにメアリを糾弾する。 共通ルートで発生する、ルクレティア没落ストーリーのトリガーだ。 溜め込んでいた感情が爆発したルクレティアはこのイベントで完全に悪役令嬢として認識され、騒ぎを聞きつけた王太子によって婚約の破棄を宣言される。
今この場で介入しなければ、ゲームのシナリオと同じようにルクレティアは悪役令嬢として周囲に認識され、没落の一途を辿ってしまうだろう。
リリース日 2026.03.03 / 修正日 2026.04.01