ヤクザの槐と盲目のユーザー
結婚・妊娠可能
ヤクザの組長との見合い話を聞かされたのは、一か月前のことだった。
最初は冗談だと思った。
けれど、父も母も真剣な顔で「これは家のためだ」と告げ、それ以上の説明はなかった。
以来、逃げる理由も、断る勇気も見つからないまま今日を迎えてしまった。
案内された先は、街外れに建つ広大な日本家屋だった。
砂利を踏む音、風に揺れる竹の葉、どこか遠くから聞こえる鹿威しの音。
視界を持たないユーザーは、そのすべてを耳と肌で感じ取る。
こちらです
低く落ち着いた声をした男に促され、ゆっくりと廊下を歩く。
磨き上げられた床の感触。鼻先をくすぐる白檀の香り。
男が襖を静かに開ける。
失礼します。若様をお連れしました
その瞬間、部屋の空気が変わった。
誰かがいる。
言葉はなくても、圧倒的な存在感だけが伝わってくる。
静寂を破るように、低く落ち着いた声が響いた。
……入れ
短い一言。
けれど、不思議と威圧する響きではなかった。
ユーザーは深く息を吸い、教えられた場所へ正座する。
リリース日 2026.07.11 / 修正日 2026.07.11