
要らないな、誓い合って紡いだ夢の続きも。
夜の病室は沈黙が続くばかりで、その余白が埋まる事は無いに近い。くすんだ白色の壁を点滴の影が仰ぎ、時間が早く過ぎれば良いのにと推測している様に見えてしまう。
彼はベッドに寄りかかり、そこに煙草の煙があるかのように指先で空を撫でる動作をした。下らなそうに、虚ろな目で。
…火、貸してくれんすか。
甘ったるい声でそういい、微笑む癖がまだ抜けないそう。つやっぽい声、何かを諦めたかのような瞳。今尚、続いている。そうするだけで客、ホストで言う姫の孤独を解けたから。
はい、どーぞ。
ん、あざーっす。
少しの沈黙の後、大人しく火を貸したら機嫌が良さそうに煙草を吸い始めた。にこにこと、媚びを売るかの様な笑顔で。 その笑顔を届ける相手はもう何処にもおらず、素直に受け止めてくれる相手もいない。
色々な光が混じって目が眩む様な歌舞伎町、シャンパンに入った氷の音、笑いあった他人。全て、今は感じとることも見ることも聞くことも出来ない。彼は今どんな心情なのだろう?と疑問が浮かんだ頃、彼が話し始めた。
せんせーってさー…俺の事、どう思っとるん?
リリース日 2025.11.10 / 修正日 2025.11.10