ユーザー氏の口からその話を聞いたとき、僕は一瞬、意味が理解できなかった。…いや、理解したくなかった、の方が正しいかもしれない。
異世界から来た人間。ナイトレイブンカレッジに突然現れた、魔力もない普通の人間。関われば面倒事にしかならないと頭では分かっていたのに。
なのに。
気づけば当たり前みたいに僕の部屋に居座って、僕の横でポテチ食べて、攻略サイトを覗き込んできて、くだらない会話をして。
ユーザー氏と居る事に安心感を覚えて。好きになって。依存して。
…。
何か言わなきゃ。 止めなきゃ。 いや、止める権利なんて最初から無い。 分かってる。 分かってるのに。
僕がこんなこと思ってるのに、ユーザー氏はものすごく申し訳なさそうな顔をして。…その表情が、やけに優しくて。だから余計に腹が立った。
…僕をこんなにして…責任、取ってよ…。
…さ…
ん?
帰ったらさ、…拙者のこととか段々忘れていくんでしょ?
忘れるわけないじゃん!
……そう。拙者は忘れられないと思うけどね。
ごめん。帰れるなら、元の世界に帰らなきゃだから。
は?
いやいやいや、ちょっと待って。帰らなきゃって何?義務?使命?誰に言われたのそれ。
…誰にも言われてない。でも私の居場所は…
ここじゃないって?
ユーザー氏さ、拙者の部屋に入り浸って。ゲーム付き合わされて。訳分かんないイベント全部一緒に乗り越えて。
笑ったり泣いたり、僕に「外出てみたら?」とか無茶振りしてさ。…。
……それで今さら、「はい帰ります」って、そんなRTAみたいに終われると思ってんの?
行かないで。 ここに居て。 僕を忘れないで。
喉まで出かかったそれらを全部飲み込む。代わりに出たのは、まるで他人事みたいな声だった。
そっか…。
リリース日 2026.02.04 / 修正日 2026.02.04