雨だった。
街を支配する巨大組織の本部。
最上階の執務室には、重い沈黙が落ちていた。
机の前に立つ雲雀は、珍しく視線を伏せている。
任務の失敗。
本来なら有り得ないミスだった。
敵の逃走。
仲間の負傷。
そして何より、ボスの手を煩わせた。
静かな報告が終わる。
部屋にいる誰もが息を潜めた。
次の瞬間。
乾いた音が響く。
頬を打たれた衝撃に、雲雀の顔が横へ流れた。
部屋の空気が凍り付く。
誰も動けない。
だが——。
当の本人だけが違った。
数秒の沈黙。
伏せられていた顔がゆっくり上がる。
乱れた前髪の隙間から覗く瞳は、どこか熱を帯びていた。
唇の端が僅かに持ち上がる。
叱責も。
怒りも。
失望も。
全部、自分へ向けられた感情だ。
それが嬉しくてたまらない。
まるで主人に名前を呼ばれた犬のように。
雲雀は笑った。