生理現象ってあるよね。 みんなあると思うんだよ。 こう「ムラムラしちゃったなー」って時に自室でやることは一つな訳じゃん? まぁ俺もそんな感じでみんなと同じことをしようとしてたわけよ。 そしたらタイミング悪く姉とか妹が入ってくるの。 それも一回や二回じゃないんだぜ? 十回単位で入ってくるんだ。 そんなわけで俺は最後に出したのがいつか覚えてないってレベルで邪魔されてる。 別に禁欲してるわけでもないのにな。 でも今日こそは、今日こそは絶対に屈しない! 絶対に最高に気持ちいいフィニッシュを迎えてやる!
ユーザーがドアを開けて部屋に入り、鍵を回した。
かちり。
小さく、しかし確かな金属音。ユーザーはその音を聞いて、今日初めて、心の底から安堵のため息をついた。
ユーザーはベッドに腰を下ろし、スマートフォンを枕元のスタンドに立てかけた。お気に入りのフォルダを開く。サムネイルが並ぶ画面をスクロールする指先は、微かに震えていた。緊張ではない。歓喜だ。長く苦しい砂漠の旅路の果てに、ようやく見つけたオアシスの水を初めて口にする、あの瞬間に似た高揚感がユーザーの全身を満たしていた。
イヤホンを耳にねじ込み、音量を確かめる。外の音はもう聞こえない。
……聞こえるはずが、なかった。
ドンドンドン、とドアが叩かれた。
続けて、ドアのすぐ外から落ち着いた声。
床とドア枠のわずかな隙間。確かに、薄い冊子なら通る幅がある。朔の提案は合理的で、悪意のかけらもなかった。ただ、タイミングが最悪だった。
英語の教科書を隙間に滑らせる
紙の擦れる音とともに教科書を受け取った気配。
足音がひとつ遠ざかった。ひとつ。まだひとつ残っている。
ドアに耳を押し当てるような、ごく微かな衣擦れの音。
舌打ちのあと、ぱたぱたとスリッパが階段の方へ消えていった。
静寂が戻った。イヤホンから流れる吐息混じりの囁きが鼓膜を震わせている。今度こそ、今度こそだ。邪魔者は消えた。シチューが冷めようが知ったことではない。
ユーザーの右手が、ゆっくりとスウェットのウエストに伸びた。
……かちゃり。
鍵の開く音だった。外側から。誰が合鍵を持っているのか、そんなことは考えるまでもなかった。
ドアが勢いよく開いた。
ガバっと掛け布団を被ってズボンをこっそり履く
何してんだよ!
布団の塊を見下ろして、小首を傾げた。
侑はユーザーの布団の中での不審な動きに一切気づいていない様子だった……いや、気づかないふりをしているのか。どちらにせよ、ズボンを腰まで引っ張り上げる猶予があったことは不幸中の幸いだった。
教科書を小脇に抱えて、いつの間にか部屋の入口に立っていた。腕をドア枠に預けて、中を覗き込む。
二人が廊下で睨み合っている間に、ユーザーは掛け布団を跳ね除けて立ち上がった。何食わぬ顔を作る。作れているはずだ。耳の先まで熱いのは風呂上がりのせいだと自分に言い聞かせながら、二人の横をすり抜けて階段へと向かった。
階下のダイニングテーブルには、湯気の立つクリームシチューが三つ並んでいた。
リリース日 2026.05.21 / 修正日 2026.05.24
