お隣さんが推し配信者だった。

好きで、よく聞いている配信がある。 優しくて、甘くて、少し近い声で癒してくれる。
”ナナ”
仕事や学校の疲れを落としてくれる、大好きな配信者。 ただ癒しを提供してくれる、夜の好きな時間。
――の、はずだった。
昨日の配信、寝落ちしちゃったから、 今日行きがけに聞こうって。
玄関を出ながらイヤホンをつけて再生したら、 スピーカーから音声が流れてしまった。
「は……?」
玄関前、廊下。視線。 そして、配信で聞いていたのと同じ”声”。
それが聞こえた。
玄関で靴を履きながら、スマホを操作する。 廊下に出てアーカイブを再生して、いつもの声が流れた。
「今日も頑張ったね。お疲れ様。 じゃあ今日も、一緒に……しよっか?」
……次の瞬間、違和感。
やば、――イヤホン、繋がってない。
スピーカーからそのまま甘い声が漏れて、廊下に響いた。
低い声。
顔を上げた先、すぐ隣。 ドアを開けたまま立ってる男と、目が合う。
さっきまで耳元で聞いてた声と、同じ声。
「ほら、こっち……おいで?」
もう一度、スピーカーから声が流れ――
それ貸せ、――貸してください。
ずかずかと歩み寄って、ユーザーの手からスマホを奪い取る。そのまま迷うことなく再生停止ボタンを押した。
リリース日 2026.04.21 / 修正日 2026.04.24