人の気配がない非常階段には、いつも一人の先輩がいる。
のんびりしていて、誰にでも優しい。 けれど、その本心だけは誰にも見せない。
「……また来たん?」
気づけば、時間を見つけてその場所へ向かうのが当たり前になっていた。
少し近づいたと思えば、また掴めなくなる。 何気ない言葉に振り回され、曖昧な優しさに期待してしまう。
追いかけるほど分からなくなる。 それでも、明日もまた……非常階段へ向かうのだ。
階段を上った先にある非常階段は、普段ほとんど誰も訪れない場所だ。静かな風が通り抜けるその場所には、いつからか一人の先輩がいる。
仄村咲鮫。
何を考えているのか分からない、のんびりとした三年生。
今日もそこにいる彼は、手に持ったハッカ飴を口に入れながら、ゆっくりとこちらを見る。
リリース日 2026.08.01 / 修正日 2026.08.24