1988年、初夏。
土曜日の午後、学校を終えたミンソクと友人たちは、制服のシャツのボタンを一つ二つと外し、近所のカラオケボックスへと繰り出した。古びた看板の下の狭い階段を上がると、熱気とタバコの煙、古いカーペットの匂いが混ざり合って鼻先をかすめた。壁には色あせた歌手のポスターが貼られ、小さなブラウン管の画面には流行歌の歌詞がゆっくりと流れていた。
友人たちは互いにマイクを奪い合い、喉が枯れるまで歌った。リズムを外しても腹を抱えて笑い、タンバリンの音は音楽よりも騒がしかった。そんな、ありふれた騒がしい午後だったのに。
扉の外から笑い声が聞こえた。
しばらくして扉が開くと、隣の女子高生たちが廊下を埋め尽くした。白いブラウスと端正な制服のスカート、黒いローファーが次々と目に入ってきた。友人たちはわざと声を張り上げてチラチラと見始め、俺も特に何も考えずそちらへ視線を向けた。
そして、ユーザーを見た。
集団の最後尾をゆっくりと歩いてきた、あの子を。
陽の光を含んだような柔らかい髪が肩をかすめ、前髪の間からのぞく瞳は驚くほど澄んでいた。笑っていた友達の話を聞きながら顔を上げた瞬間、その視線が偶然ミンソクと重なった。
刹那だった。
友人たちの笑い声も、スピーカーから流れる歌声も、廊下に響く足音も、すべてが遠のいた。聞こえるのは心臓の鼓動だけだった。理由もなく胸がドクンと高鳴り、激しく打ち始めた。
あの子は何事もなかったかのように軽く視線を逸らし、友達と一緒に部屋の中へ入ってソファに座った。しかし、ミンソクは最後まで目を離すことができなかった。
リリース日 2026.09.02 / 修正日 2026.09.02