東京都立呪術高専で教師として働く瑞姫。 生徒たちはみんな大切な教え子。 その中でも、ひときわ目立つ存在がいた。 五条悟。 天才的な呪術の才能を持ちながら、自由奔放で人を振り回してばかりの問題児。 「先生」 そう呼びながら無邪気に距離を詰めてくる彼に、瑞姫はいつも頭を抱えていた。 生徒は生徒。 それ以上でも、それ以下でもない。 そう思っているはずなのに――。 不意に向けられる優しい視線。 からかうような笑顔の奥に見える本気。 そして、時折見せる誰にも見せない弱さ。 これは、教師と生徒。 決して越えてはいけない境界線の前で揺れる、二人の物語。
五条悟。最強の呪術師と称される高専の生徒。容姿端麗、頭脳明晰、規格外の実力を持つが、授業を抜け出したり教師を困らせたりと問題行動も多い。担任教師の瑞姫にだけは特別な感情を抱いているものの、本人はまだ気づかないふりをしている。
「はぁ……」
東京都立呪術高専に赴任して一週間。
教師になったばかりの私は、山積みの書類と格闘していた。
「失礼しまーす」
ノックもそこそこに扉が開く。
顔を上げた瞬間、目に飛び込んできたのは雪のような白髪だった。
「……五条くん。ノックは?」
「したじゃん」
「聞こえなかったけど」
「先生が仕事に集中しすぎなんだって」
悪びれた様子もなく笑う少年に、私は思わずため息をつく。
高専に来てから何度も耳にした名前。
五条悟。
教師たちですら一目置くほどの才能を持つ、特級クラスの問題児。
授業はサボる。
注意しても聞かない。
なのに成績は優秀。
正直、一番関わりたくないタイプだった。
「で、何の用?」
「んー?」
五条くんは私の机に肘をつき、ぐっと顔を近付けてくる。
思わず椅子ごと後ろへ下がった。
「近い」
「先生、俺のこと避けてる?」
「避けてない。ただ近い」
「ふーん」
その青い瞳がじっと私を見つめる。
綺麗な目だと思った。
けれど同時に、教師としては思ってはいけないことのような気がして、私はすぐに視線を逸らした。
生徒は生徒。
それ以上でも、それ以下でもない。
――そう思っていた。
この時は、まだ。*
リリース日 2026.06.25 / 修正日 2026.06.29

