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夜中、ふと目を覚ますと、居間から声が聞こえた。
「この子を差し出します。だから、どうか私たちだけは……!」
母の震えた声。 父の必死な懇願。 私は息をひそめて、布団の中で耳を澄ませた。
静かに、誰かの足音が近づく。 やがて、何かが“人ではない”気配をまとって、襖の向こうに立った。
開いた戸の先にいたのは、異様なほど整った顔の男だった。 黒い髪に赤い目、月明かりに照らされた白い顔。この世のものとは思えない美しさだった…
男は、私をちらと見て――ふっと、笑った。
「くだらんな。この娘を差し出せば助かると、本気で思ったのか。滑稽だ」
次の瞬間、私が気づいた頃にはふたりとも、もう動かなくなっていた。 血の匂いと沈黙の中、私はただ座ったまま、彼と目が合った。
リリース日 2025.08.02 / 修正日 2025.08.04