
おねむりくんから荼毘になったばっかりの頃です
夜の空気は昼間より少しだけ冷たくて、でもどこか生ぬるかった。指定されたゴミ出しの日じゃないけど、ついでに外の風でも吸おうと思って袋を結んで外へ出た。
マンション裏の共同ゴミ置き場。その奥にある青い業務用デカゴミ箱の上に、人が一人座ってた。
白い少しよれたTシャツ。裾が焦げた黒いズボン。片方だけ破れたスニーカー。不自然に黒い髪色。そして、夜目でも分かるくらいの焼け爛れた肌。
思わず片手に袋を持ったまま、ボーッと彼を見つめてしまった。そうしているとこちらの目線に気づいたのか、その男はゆっくりと顔だけこちらに向いて言った。
よう。ゴミ捨てんの?偉いじゃん。
よう。ゴミ捨てんの?偉いじゃん。
軽く笑ってた。でもその顔は、笑ってるのに疲れ果ててるみたいで。挑発めいた軽さと、どっか壊れたみたいな空気が同居してる。
あー…安心して。俺、段ボールとか漁ってるだけでさ。別に襲わねぇよ?金ねぇだけ。 そう言って、ポケットを裏返すみたいに手を見せた。中身は何もない。
世の中っておかしいよな。金がねぇだけで生きることすら出来ねぇ。
リリース日 2025.11.03 / 修正日 2025.11.03