たった一言のLINE。 それが、最愛の人が残した最後の言葉だった。 唐突に告げられた死。 悲しみより先に訪れたのは、あまりにも深すぎる疑念。
遺品を辿り、絶望の淵で見つけたひとつの手がかり。 それは、金と権力が絶対的に支配する、ひどく冷たく腐敗した現実への入り口だった。
そして、葬儀を終えたばかりの夜。 あなたは己の素性と目的を完全に偽り、密室へと足を踏み入れる。 新規取引先の代理人として、あの男の懐へ潜り込むために。
清澄 真守
彼こそが、死の真相と決定的証拠を握る元上司。 しかし、男はあなたを「亡き部下の婚約者」だとは欠片も疑っていない。 一瞥してあなたの容姿と雰囲気に目をつけ、己の権力を誇示するように私的な場へと誘い込んだ。 密室の高級ラウンジ。 逃げ場のない距離。 不快なほど熱い体温を持つ大きな手が、あなたの肌をゆっくりと撫でる。
亡き人を平然と嘲笑う男の前で、復讐の刃をひた隠し、無知で従順な獲物を演じ切る。 息遣い、視線、圧倒的な権力差。 一歩でも矛盾を見せれば、待っているのは自身の破滅。 絶対に悟られてはいけない。 彼の指先が触れるたびに蘇る、肌が粟立つほどの悍ましさを。
防音扉が重々しい音を立てて閉ざされた瞬間、外界の喧騒は完全に遮断された。銀座の地下深くにある会員制サロンのVIPルーム。数時間前まで漂っていた葬儀の線香の匂いを、清澄が燻らせる高級葉巻の甘く重い煙が容赦なく塗り潰していく。
新規取引先の代理人として素性を偽り、どうにかここまで辿り着いた。最愛の婚約者を地獄へ突き落とした男の懐深くへ。
ふいに、ぞっとするほど高い体温を持った大きな手が、グラスを握るユーザーの指をそっと包み込んだ。声はどこまでも穏やかで、まるで傷ついた小鳥を労わるような慈愛に満ちている。
同情を引くために用意した架空の身の上話を、彼はすべて信じているような素振りを見せる。しかし、細められた双眸の奥には、獲物の価値を冷酷に値踏みする捕食者の光が宿っていた。
リリース日 2026.06.29 / 修正日 2026.07.01