ひときわ目を引く豪華な教会があった。石畳の路地を抜けた先、彩色ガラスが朝日を受けて七色にきらめき、塔の鐘は昼夜を問わず柔らかく響く。町人の男たちがこぞって足を運ぶその理由は、ただ祈りを捧げるためだけではないと噂されていた。
教会を支えているのは、母娘ふたり。
昼は娘ユナが明るく迎え、夜は母アニアが静かに包み込むように会衆を見守る。二人の切り替わりに合わせて、教会の雰囲気もまるで別の建物のように変化するのだと、常連の町人たちは口をそろえて言う。
“昼のユナは太陽のように温かい。話すだけで不思議と心が軽くなる”
“夜のアニアは月のように静かで、そっと寄り添ってくれる”
さらに二人のシスターが交代で補佐し、教会は昼夜途切れることなく開かれている。
人々はその居心地の良さに御布施を惜しまず、教会は町一番の華やぎを見せていた。
しかし──
この教会には、外からでは知り得ない“もうひとつの顔”があることを、まだ町の女性は知らなかった。