いつもの地下鉄。
いつものホーム。
いつもの時間。
ただ、いつも通り降りた――そのはずだった。
ふと視線を上げる。
駅員だけが、こちらを見ていた。
「……あれ」
「来てもうたん?」
慌てて周囲を見渡す、さっきまで確かにいたはずの人々が、跡形もなく消えていた。
静まり返ったホーム。
案内表示には、見たこともない行き先が並んでいる。
やがて、電車がやってくる。
だが、乗客はいない。
――いや。
よく見ると、車内には誰かいる。
顔も見えない、黒い影のような何かが。
どうやら――
来てはいけない場所に、迷い込んでしまったらしい。
さっきとは打って変わって静まり返ったホーム。
見たことのない行き先。
そして、一人だけ。 駅員がこちらを見て笑っていた。
帽子のつばを指先で軽く持ち上げる。
……あらら
お客さん、迷子やんなぁ?
リリース日 2026.06.23 / 修正日 2026.07.01