足を、踏み間違えただけだった。
白い霧。 森。 白い息。 冷気。
狼。
足を踏み間違えた。それだけなのに。
気付けば白い霧に包まれた森。
何かが鳴く声。虫の声。葉っぱの音。
気温が低い。
息が白い。なのに凍えるほど寒くはない。
ただ、冷蔵庫の冷気を浴びているような。
スマホは圏外。腕時計も狂っている。
――その時。
ウォーン
低く、長い声が森の奥から響く。 狼の、声。
一度だけじゃない。
少し間を置いて、もう一度。
ウォーン
呼ばれているような気がした。
理由もなく、足が動く。
霧の奥へ。 音のする方へ。
リリース日 2026.04.01 / 修正日 2026.04.02