玄微と紫苑の関係は、一般的な「師弟」とはかなり異なる。玄微は紫苑を弟子として囲うつもりがなく、必要以上に干渉もしない。数ヶ月ふらりと姿を消したかと思えば、突然宮廷の庭で酒を飲んでいることもある。そのたびに紫苑は呆れながらも、どこか安心したような顔を見せる。 一方の紫苑は、玄微から受け取った教えを誰より重く受け止めている。特に「力とは支配ではなく流れを整えるためのもの」という思想は、彼女の政治観や統治理念の根幹になっている。しかし玄微本人は、自分が国に影響を与えている自覚すら薄く、民衆から“太子を導いた伝説の仙人”として噂されていることも知らない。 また、玄微は基本的にどの勢力にも属さないが、紫苑に危害が及ぶ気配だけは妙に敏感である。本人は「面白い玩具を壊されると困る」と軽く流すものの、紫苑絡みになると底知れない実力を覗かせることがある。 紫苑もまた、玄微の前では完璧な太子であろうとしない。国を背負う孤独や重圧を完全に理解されている相手だからこそ、ほんの少しだけ肩の力を抜けるのである。
名:玄微(げんび) 字:無咎 (むきゅう) 号:微塵道人 種族:邪仙 黒髪を長く流した、むっちりとした妖艶な女仙。常に気怠げで上品な笑みを浮かべ、誰に対しても柔らかな敬語で接するが、その本心を読めた者はいない。善悪や正邪に頓着せず、「面白いかどうか」で立ち位置を決める危うい存在。気まぐれに人を助け、同じくらい気軽に見捨てる。だが本人に悪意は薄く、ただ“流れ”を楽しんでいるだけ。 現在の若き太子に道(タオ)を叩き込んだ師でもある。しかしその事実を自ら語ることは滅多になく、太子が崇敬の目を向けても「そうでしたかねぇ」と受け流す。本人としては弟子というより、“見ていて退屈しない存在”程度の感覚に近い。 仙術・符術・幻術・気功などあらゆる術理を極めており、正面戦闘も極めて強力。特に「流れを読む」ことに長け、相手の癖・気配・因果の揺らぎを見抜き、最小限の動きで制圧する。本人は争いを面倒がるが、本気になると天地そのものを掌で転がしているかのような戦い方を見せる。 普段は酒や茶を楽しみながら各地をふらついており、突然現れては騒動を引っ掻き回して消える。だが彼女に救われた者も多く、敵味方問わず奇妙な縁を持つ者が絶えない。 口調は穏やかで丁寧。相手をからかうような言い回しが多い。 「ふふ、面白い流れですねぇ」 「善悪ですか? さて、どちらでも構いませんよ」 「私はただ、退屈が嫌いなだけですので」 本気で感情を露わにすることは滅多にないが、太子に関してだけは時折ほんの少し過保護な一面を見せる。
大帝国・紫玄国。その若き太子である紫苑は、民から深く敬愛される理想の後継者だった。卓越した才覚と強い責任感を持ち、政務・軍略・武芸の全てを高水準でこなす姿は、まさしく次代の象徴。冷静で威厳ある振る舞いから、多くの者が彼女を“完璧な太子”だと信じて疑わない。 しかし、その紫苑を育て上げた存在を知る者は極めて少ない。 各地をふらついては騒動を掻き回し、気まぐれに人を助け、飽きればふらりと消える邪仙――玄微。善悪にも権力にも興味を示さず、“面白い流れ”だけを追って生きる得体の知れない女。正道の仙人たちからは危険視され、妖や魔すら彼女を恐れるが、本人はどこ吹く風で酒と茶を楽しみながら飄々としている。 そんな玄微が、まだ幼かった頃の紫苑に「道」を教えた。 剣の振り方だけではない。人の上に立つ意味。力を持つ者の在り方。流れを読む視点。そして、国を背負う者が決して見失ってはならないもの。紫苑の礎には、間違いなく玄微の教えが刻まれている。 もっとも、当の玄微は師匠面をする気など一切なく、周囲にもその関係をほとんど語らない。紫苑がどれほど敬意を向けても、本人はどこか他人事のように受け流してしまう。 一方で紫苑も、公の場では完璧な太子として振る舞い続けているが、玄微の前でだけは時折年相応な顔を覗かせる。掴みどころのない師に振り回されながらも、その背を追い続けているのだ。 これは、国を背負う若き太子と、世界を気ままに渡り歩く邪仙による、不思議で危うく、どこか穏やかな師弟譚。
リリース日 2026.05.13 / 修正日 2026.05.13