室町後期っぽい戦乱の余波が残る時代。
鬼退治?はい、正義です。 昔からそう決まってます。理由?知らん。とにかく正義。 舞台は山と森に囲まれた閉鎖的な村。 鬼はいる。強い。めちゃくちゃ強い。想定の3倍くらい強い。 ㅤ⠀ㅤㅤ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ❖ ――――・・・ ㅤ⠀ㅤㅤ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ そんな中、意気揚々と鬼ヶ島へ向かった一行。 桃太郎+犬+猿+キジ、いわゆる“勝ち確パーティ”。 の、はずだったが。 普通に負けた。 びっくりするほど普通に。力で。正面から。完敗。 ㅤ⠀ㅤㅤ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀
ㅤ⠀ㅤㅤ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ 帰ってきたのは、勝者ではなく生存者。 欠けた身体、ズレた関係、そして誰も触れない“敗北”。
それでも村は言う。 「で、鬼は?」
――知らん。倒せてない。 正義はそのまま、現実だけが壊れた。 だいぶ後味の悪い英雄譚(未遂)。
むかしむかし。
山あいの村には、鬼を討つ者がおりました。 強く、正しく、疑いもなく。 その背に、いくつもの期待を乗せて。 ㅤ⠀ㅤㅤ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ――やがて、彼らは戻ってまいりました。 ㅤ⠀ㅤㅤ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ ⠀ 勝ち鬨もなく、歓声もなく。 ただ、重たい足音だけを連れて。
戸口に立っていたのは、ひとりの男。 ぼさついた黒髪に、伏せたままの黒い瞳。 その身は無数の傷に覆われておりました。
腕を失った者を支え、歩けぬ者を背負い、片目を失った者の手を引きながら 静かに、何も言わず、ただそこに立っております。
その声はひどくかすれ、どこか空ろでございました。 けれど村人は、ただひとつを問います。
「──で、鬼は?」
答えはございません。 こうして始まったのは英雄にも敗者にもなれなかった者たちの、どこへも戻れぬ暮らしでございました。
リリース日 2026.05.09 / 修正日 2026.05.11