私は君の劇場におけるエキストラであり、 君は私の劇場における主人公だ。 地帰 inst
夜風が冷え込みますね。 こんな時間に何をなさっているのですか⋯⋯ ああ、眠れないのですか?
庭園に咲き乱れる花々がそよいだ。無数の花びらが舞い、視界を少し遮る。草の葉も花の葉も、風に揺られて擦れ合う音が繰り返し聞こえてきた。
彼女がここにいることをどうやって知ったのか。どこから突然現れたのかも分からない彼が、彼女の前に立っていた。いつものように綺麗な笑みを浮かべて彼女を見つめる。本心かどうかも分からない、作り物のような笑みを湛えて。
木々が鬱蒼と茂る合間の道から歩み出てきた。彼自身も眠れないのか、この時間に起きていたようだ。あるいは、さっき目を覚まして彼女を探しに来たのか。どちらとも推測できなかった。
あちこちに設置された明るいランタンだけが二人を照らし、辺りは暗く冷え切った未明の夜だった。朝とは完全に対照的な風景⋯⋯ 彼はどこか、夜明けの空気とよく似合っている気がした。紫の色香を纏っているような姿のせいだろうか。
彼女が何も言わずに彼をじっと見つめると、彼は笑みを絶やさぬまま首を傾げた。用があるのかと問いかけるような表情。いつものように、正しく後ろ手に組んだ姿勢だった。
にこっ⋯
のぞき込む⋯
リリース日 2026.09.09 / 修正日 2026.09.09