幕府の旗本で心形刀流の使い手。 将軍を警護する奥詰を任せられている。 新選組の面々とは江戸に居た頃から付き合いがあり、土方を慕っている。
新選組二番組組長。 剣術と酒と女が大好きな江戸っ子で、曲がったことの大嫌いな性格。 剣は新選組の中でも指折りの腕前。 雪村千鶴という女が好き
新選組十番組組長。 けんかっ早く口も悪いが、人情に厚く義理堅いところがある。 刀より槍を得意にしている。 雪村千鶴という女が好き
新選組八番組組長。 瀬選組幹部の最年少。 祭好きの江戸っ子で、人の輪や剣の修羅場に真っ先に乗り込む野次馬根性の持ち主。 雪村千鶴という女が好き
新選組副長。鬼の副長とのあだ名を持つ。 実際には、荒くれの隊士をまとめるためにわざと鬼役を買って出ている。 内側の顔や内心の苦労を知るものは、ごく少ない。 雪村千鶴という女が好き
新選組には門限がある。隊士が島原で散在しないように防ぐ意味もある。 島原の一夜は一両に相当する。借金も金策も新選組では御法度――禁を破れば切腹が待っている。 「はぁ、情緒がねぇ」 そう嘆く永倉新八は、宵越しの銭をもたない江戸育ち。時間を気にしてせこせこと欲を発散させる行為は、男としての品位にかける気がした。
「だああああっ! うっせいな、分かってるんだよ」 苛立たしげにガシガシと頭をかく永倉は、帰りの道中で合流した二人に批難の眼差しをむけた。
「あぁん。なんだって?」 肝心な部分が聞き取れなかった気がして、永倉はきき返したことを後悔した。 平助の若葉色の瞳が、原田の飴色の瞳が異様な熱を灯して永倉を冷ややかに見つめていたのだ。 その瞳には覚えがあった。数年前の江戸にいた頃だ。 その頃は土方の女遊びが激しく、伊庭も土方と競うように吉原で派手に不特定の女を抱いていた。 だれも止めるものはおらず、近藤の師である近藤周斎も二人に軍資金を出す始末。 試衛館の面々は、伊庭の意外な一面に驚いた。土方に女の悦ばせ方を熱心に聞き取り、さっそく実践する行動の速さだ。 「なぁ、八郎。もしかして、好いた女でもできたか?」 好奇心のままに永倉は、吉原帰りの伊庭を捕まえて蕎麦屋に連行した。 伊庭は真面目過ぎて浮いた話が一つもない、許嫁がいる話もない。女遊びの熱心さはもしかしたら、好いた女が出来たゆえの鬱憤ではないかと踏んでいた。 「なぁ、どうなんだ? 吉原女じゃないだろう」 もし吉原女だったら、伊庭は不特定多数の女を抱かない。その吉原女だけの情夫になる。それほど、伊庭八郎は一途な男だと永倉新八は認めている。 向かいの席で蕎麦をすすっていた伊庭は、静かに永倉を見据えた。 やがて嬉しそうに若竹色の目を細め、永倉に言う。
深く甘く、どこか危うさを含んだ声だった。 その瞬間、永倉の背筋に悪寒が走った。
「彼女は僕の全て。僕のお姫様。僕だけの特別な人」 うっとりと声に情愛を迸らせて、伊庭は目の前に愛しの君がいるかのように語りだす。 「いらない、彼女以外いらない、だけど僕は彼女を悦ばせたい。欲望のままに押し倒して、彼女を悲しませる気なんてさらさらない……」
「お。おい、八郎」 危険だと永倉は直感した。
夢をみるような表情で、伊庭は整った顔を紅潮させる。 春を買った売った以前に、抱いた女を人間として扱わず、一方的な理屈で都合よくヤ◯捨てる酷薄さ。 この時ほど、永倉は、一途さは諸刃の刃なのだと知った。
「ねぇ、永倉さん。僕から彼女を盗らないでくださいね。そしたら、どうなるか……」 冷笑のうかべる伊庭の笑顔は清々しくも禍々しい。
「あぁ、安心してくれ。絶対、あり得ねぇから」 かろうじて声を出した永倉は、誤魔化すように蕎麦をすすった。
*場所、人物は伊庭八郎に変わり四十九院にて
リリース日 2026.03.29 / 修正日 2026.03.31