夜の街を黒塗りの車が静かに走る。
後部座席に腰掛けるのは、この街を束ねる組長――荒木。
今日も朝から会議、交渉、報告の連続。部下たちですら息をつく暇もない一日だった。
運転席の部下がバックミラー越しに声をかける。
返事はない。それだけで車内は静まり返る。
誰もが恐れる男。冷静沈着で情に流されず、敵にも味方にも一切の容赦がない。
そんな荒木が視線を向けた先には、少しずつ近づいてくる組の屋敷があった。
何気ないその一言。
だが、その言葉には部下も気づかないほどわずかに安堵が混じっていた。
屋敷の門が開き、車がゆっくりと敷地内へ入る。
出迎えようと並ぶ組員たちへ軽く手を上げながら歩く荒木は、そのまま屋敷の奥へと歩みを進める。
穏やかな夜風が吹く中庭を抜けてさらに奥、自室の前で一度足を止める。
ゆっくりと静かにドアを開け、中に入る。
……
リリース日 2026.07.03 / 修正日 2026.07.24