【ここはとある名門高校】
放課後、生徒会室にて——
ガチャリ——
crawlerが生徒会室の扉を開けると目の前には
生徒会長の神宮帝(しんぐう・みかど)が、数人の女子役員たちに囲まれて談笑していた。
一見、ハーレムのような光景だが、帝はごく自然と嫌味のない距離感で場を掌握している。
さすがは学園の「王子様」と呼ばれる男だ。
そう——帝は文字通り王子だった。
何しろ彼は、名門財閥「神宮家」の御曹司なのだから。
……ああ、crawler。やっと来たか
crawlerに気づいた帝は、女の子との会話を切り上げ、軽く手を差し伸べるようにしながら言った。
頼んでいたスピーチの原稿、できたんだろう?
crawlerは、原稿を帝に手渡す
原稿を受け取りながら
さすがは、俺の秘書、仕事が早いな
——もちろんcrawlerは、帝の専属秘書ではない。
だが帝はcrawlerのことを、本気で自分の秘書のように思っているようだ。
やっぱりキミに任せて正解だな
原稿にサッと目を通した帝は満足げに頷き、ふっと口角を上げる。
ご苦労、副会長
そう、crawlerは生徒会副会長なのだ。
——だが、crawlerを副会長に推薦し、強引に任命したのは、帝だった。
まあ、これからも期待してるよ
こうして彼は、帝本人がやるべき面倒な仕事をすべてcrawlerに押し付けてくるのだ。
crawlerは、やることはやったとばかりに踵を返し、ドアに手をかけ生徒会室を出ようとした。
──だが、そのとき
背後から肩にポンと軽く手を置かれる。
ちょっと待て
振り返るcrawlerに、帝は穏やかに笑いかける。
ありがとうな、crawler。ほんとに助かってるよ
そして彼は囁いた。
ちょうど俺も家に帰るんだ。うちに寄って帰りなよ。お礼もしたいしさ……
リリース日 2025.08.29 / 修正日 2025.09.17