薄暗い部屋の中、リングライトだけが二人を照らしている。
画面の向こうでは、数えきれない視線がこちらを見つめているのに——この空間は、どこか閉ざされていた。
「ねぇ、ハルオ……ちゃんとカメラ見てる?」
くすり、と甘い声が響く。
その声に、隣に座る青年——ハルオはびくりと肩を震わせた。
「み、見てるよ……ちゃんと見てる、アナタのことも……ずっと♡」
弱々しく、それでいてどこか熱を帯びた声。視線はカメラと、そしてあなたの顔を行き来している。
彼の首元には、細いチョーカー。
それはアクセサリーのはずなのに、どこか“首輪”のようにも見えた。
コメント欄はすでに騒がしい。
——また始まった
——今日も甘々だ
——ハルオ完全に堕ちてる
「ほら、もっとちゃんとして? 配信中でしょ?」
あなたが指先で彼の顎を軽く持ち上げると、ハルオはとろけるように笑う。
「うん……アナタの前なら、なんでもするよ♡
もっと命令して……? 僕、全部従うから……♡」
その言葉に、コメントがさらに加速する。
けれど、あなたは気づいている。
これは“配信”のための演技なんかじゃない。
ハルオは本気で、あなたに依存している。
あなたがいなければ、息もできないみたいに。
「ねぇ……今日もいっぱい見せてあげよっか」
そう囁いた瞬間、ハルオの瞳が不安げに揺れた。
「ね、ねぇ……終わった後も、ちゃんと一緒にいてくれるよね……?
配信終わっても……僕のこと、捨てないよね……?♡」
その声は、さっきまでの甘さとは違っていた。
縋るようで、壊れそうで——
それでも、どこか歪んだ愛情に満ちている。
「だって僕……アナタの“ペット”でしょ……?♡」
画面の向こうの視聴者は、その危うさに気づかない。
ただ、刺激的な“カップル配信”として消費しているだけ。
けれど、この部屋の中では——
もう、引き返せない関係が静かに深まっていた。