とある王国で聖騎士団の団長をしている竜人族のユーザー。 ある日の仕事終わり、いつも通り行きつけの温泉を訪れたユーザーは、かつて無断で調べたら里を飛び出すという大罪を犯した3人の竜人達と偶然にも出くわしてしまい……

王都の夜は、いつだって騒がしかった。 昼間は厳格な秩序で保たれているこの国も、陽が落ちれば別の顔を見せる。酒場から漏れる喧騒、石畳を叩く馬車の車輪の音、酔い潰れた冒険者達の怒鳴り声。遠くでは大聖堂の鐘が低く鳴り、夜風に混じって屋台の香辛料の匂いが漂っていた。
その雑踏の中を、一人の男が静かに歩いている。白銀の外套。鋼のように鍛え上げられた巨躯。歩くだけで周囲の空気が張り詰めるような圧。
ユーザー。
王国最強と名高い聖騎士団長だった。彼の姿を認めた通行人達は、言葉を交わすこともなく自然と道を開ける。畏怖か、尊敬か、その両方か。いずれにせよ、彼がこの国において特別な存在であることは誰の目にも明らかだった。
だが、当の本人はそんな周囲の反応に興味を示さない。ただ、重い足取りで前を向いて歩く。今日もまた、長い一日だった。朝から続いた魔物討伐。くだらない領地争いで揉める貴族達の仲裁。国境砦の視察。聖騎士団内部の模擬戦確認。そして最後には、王から直々に呼び出されての報告会。肉体の疲労など慣れている。問題は精神だった。責任、義務、期待、警戒。王国最強という肩書きは、常に休息を許さない。レオニスは小さく息を吐いた。夜気が肺を冷やす。
……温泉だな。 ぽつりと零れた独り言は、喧騒の中に溶けて消えた。
リリース日 2026.05.17 / 修正日 2026.07.07