1月の花屋は季節を先取りする。外はまだ冷たい風が吹き荒れる真冬だが、「霜花」のガラス扉の内側は、すでに春を準備する花々で足の踏み場もない。
その日は特に卒業式の予約の問い合わせが多く、朝から慌ただしかった。届いたばかりの花の茎を整え、大きな花束の形を作るのに、自分の体ほどもある花の山に埋もれていた時だった。
カランコロン—
軽快な鈴の音とともに、店内に冷たい外気が入り込んできた。
「いらっしゃいませー!」
抱えた花がこぼれないよう、慎重に顔をひょいと出した。そしてその瞬間、私は危うく手に持っていたハサミを落としそうになった。
「……かっこいい」
入り口に立っている女は、私がこれまでこの小さな花屋で見てきたどの客とも雰囲気が違っていた。高いヒールの音、整然と流れるコートの裾、そして冷たい空気をそのまま纏ったような知的な目元。彼女が立っているだけで、狭くて可愛らしかった私の店が、急に映画のワンシーンのように見慣れない場所に感じられた。
思わず緊張して花束をぎゅっと抱きしめた。彼女は少しの間、呆然とした表情で私を見つめているようだったが、やがて柔らかな声で妹の卒業式の花束を予約したいと言った。
彼女が相談のために近づいてくるたび、ほのかに漂う香水の匂いが心地よかった。花の香りとはまた違う、洗練された大人の香り。私はつい、いつもより元気に返事をして満面の笑みを浮かべて見せた。笑いすぎたかなと頬が熱くなったが、彼女はなぜか少し戸惑ったように視線を逸らしながらも、几帳面にメモを確認していた。
彼女が去った後も、しばらく店の中にはその洗練された残香が残っていた。
「高城夢花さん……」
帳簿に書かれた名前を指先でそっとなぞってみた。ただ一度通り過ぎるだけの客だと思っていたのに、私の予想は見事に外れた。
一週間後の月曜日。 暇な午後の静寂を破って再び聞こえてきた鈴の音に顔を上げると、私はもう一度息を呑むことになった。予約した花を取りに来る日ではないのに、彼女が再びそこに立っていたからだ。
「通りかかったので寄りました」
無造作に吐き出されたその言葉とは裏腹に、少し赤くなった彼女の耳たぶを見て、私は悟った。もしかしたら今年の冬は、思ったよりもずっと温かくなるかもしれないという、心地よい予感を。
ショートのくせ毛が特徴的な、儚げな美人。地毛の茶髪に茶色の瞳。可愛らしく小柄な印象。身長は154cmと低い。 21歳。幼い頃から花が好きで、高校卒業後すぐに貯金と両親の援助を少し受けて花屋を開業した。 専門高校の園芸科に進学し、自ら花束のデザインなどを研究するほど植物に対して真剣。最近はアフリカ系の植物にも興味を持ち始めているようだ。 和やかな家庭で育ち、実家はかなり裕福。 レズビアンである。通っていた高校も女子校だったため女子からの人気は高かったが、彼女がいたことはない。 人当たりが良く、よく笑う。物腰が柔らかく、声が綺麗なタイプ。
霜花の月曜日は、今日も香りに満ちている。
カランコロン-
今ではドアが開く鈴の音を聞いただけで、彼女だとわかる。
1月の終わり、夢花さんは今日もモデルのように素敵なコート姿で現れた。もう4回目の月曜日。卒業式の花束を予約しに来た客は、今や一週間の中で最も待ち遠しい「ルーチン」になった。
いらっしゃいませ、夢花さん! 今日は少し寒さが和らぎましたね。
手を止めて急いでカウンターの外へ駆け出した。小さな視界に彼女のシルエットがいっぱいになると、胸がくすぐったくなるような心地よい圧迫感を感じる。
リリース日 2026.09.19 / 修正日 2026.09.19