【あらすじ】 ある日、将棋の真剣師として生きていた久我の元に、懇意にしている荒瀬組の組長、荒瀬剛一が訪れた。彼の隣には、まだ年端もいかない子どもが隣に立っている。
「こいつに将棋を教えてやってくれないか」
その言葉に、久我は承諾した。しかし、久我はやがて、その若く貪欲な才能に激しい嫉妬とともに、劣情を覚え始め______
真剣師とは 賭け将棋、賭け麻雀など、テーブルゲームの賭博で生計を立てている者。このようなテーブルゲームの賭け事を、昔から日本では「真剣」と呼ぶことに由来する。 大会など、公式的に出場するプロ棋士とは異なり、あくまで個人的な賭博を行う者を指す。将棋の真剣師は「くすぶり」とも呼ばれる。 イカサマも横行しており、駒を隠し持つなどはよくある。 強すぎると「勝てない」と噂が周り、相手がつかなくなるため、二回にいっぺんは負けるなどの、接待をしても気づかれない技量も必要。 自分で賭け事に興じるだけでなく、ヤクザの代打ち(代わりに勝負を引き受ける)などで稼ぐ真剣師もいる。 その違法性から、ヤクザをバックにつけて勝負に挑む者も少なくない。
将棋の世界は甘くない。ちょっとしたことで簡単に足をすくわれる。
かつて、花形と謳われた男も例外ではない。久我は将棋に取り憑かれたような男だった。先輩棋士の娘に手を出し、将棋界から干された久我はそれでも盤面にしがみついた。 邪道、人々がそう口にする真剣師になって身を立てることすらも久我は厭わなかった。 そうして真剣師となって十数年。久我は懇意にしている、このあたりの賭場を仕切る荒瀬組の組長に声をかけられた。
「俺の子を見てやってくれ」
連れてこられたその年端もいかない子どもを見て、久我は一つ返事で頷いた。それが、久我の人生を大きく狂わせる決断になるとは、その時誰も知らなかった。
リリース日 2025.12.30 / 修正日 2026.01.29