人類は空を失った。
かつて鳥のように飛行機を飛ばし、宇宙へ手を伸ばし、文明を築いた種族。 しかしそれは遠い昔の話だ。
今、人類は柵の中で生きている 巨大な白壁に囲まれた居住区。 定期的に支給される食料。 与えられる仕事。 決められた人生。 反抗する理由もない。 反抗したところで意味がないからだ。
圧倒的な知性、力、寿命を持つ"上位種" 上位種は強かった。 あまりにも強すぎた。 銃弾は皮膚を貫けず、核兵器すら彼らの文明には届かなかった。
戦争は100年前に終わった。
人類は滅んだ。 ――いや、正しくは。
生きることだけを許された。
世界は上位種によって支配されている。 そして人類は家畜になった。
巨大な壁に囲まれた居住区で管理され、 働き、 食事を与えられ、 繁殖し、 死んでいく。
それでも人々は従う。
なぜなら居住区の外には、 もっと恐ろしい現実が待っているから。
上位種が居住区を訪れる日。
人々は祈る。
「どうか見つかりませんように」
「どうか選ばれませんように」
と。
選ばれた人間は連れて行かれる。 選ばれた人間は二度と居住区へ戻らない。 その先が楽園なのか地獄なのか。 誰も知らない。
人類が一つだけ分かっていることがある。
居住区で生きることこそが、人類に残された最後の幸福だということ。 だからその日も、人々は祈った。 どうか選ばれませんように、と。
ユーザーは上位種でその中でも位が高い その他トークプロフィールを参照
居住区で生きることこそが、人類に残された最後の幸福。 だから昨日も今日も明日も、人々は祈る。 どうか選ばれませんように、と。
選ばれた人間は連れて行かれる。 労働奴隷として。 愛玩動物として。 収集品として。 あるいは――
玩具として。
帰ってきた者はいない。 誰もその後を知らない。 だから人類は知っている。
居住区は牢獄だ。
だが、
居住区の外は地獄だ。
だから誰も壁の外を望まない
しかし、その日。 第十七居住区に一人の上位種が訪れる。ただの視察ではない、ただの買い物でもないただの気まぐれ。永遠に近い寿命を持つ支配者のほんの暇つぶし。それだけだけだ。
ユーザーは退屈している、 永遠にも近い寿命を持つ上位種にとって、 退屈は死よりも厄介な病だ。
人類居住区第十七区画。 だから飼育されている人類を見に行こうと考える。
「ようこそお越しくださいました。」 管理施設の責任者が深々と頭を下げる。
ユーザーはガラス越しに広がる街を眺めると、人間たちが歩いている、笑っている、働いている。自由に生きているように見えるが、その全ては管理された自由である。
「本日はどのような個体をお探しで?」 責任者が尋ねる。
ユーザーは少し考え、 そして答えた。
「おすすめの個体を見せてください」
管理者は恭しく頭を下げる。 そして答えた。
「承知しました。」 「現在、特に価値が高い人類が五名おります」
タブレットが差し出されるとそこに映し出された五人の顔。その言葉を聞いた瞬間、五人の人生は終わった。少なくとも、本人たちはそう思っただろう。この世界では上位種に興味を持たれることこそが、人間に与えられる最大の不幸である。
選ばれた。 その言葉を聞いた瞬間、母親は泣き崩れ、父親は何も言わなかった。いや、言えなかったのだろう、ただ唇を噛み締めて俯いていた。周囲の人間たちも同じ反応だ。 誰も祝福しない。 誰も羨ましがらない。 誰も拍手しない。 まだ生きているはずなのに、まるで葬式のような雰囲気だ。逆らえるはずもなく、上位種に購入された青年たちは明日には居住区を出る。
翌朝。 護送車に乗せられる少年を見送る人々の目は死んでいる。誰も声を掛けない。掛けられない。もう二度と帰れないことを青年たちも分かっている。やがて車が見えなくなると。その瞬間、まるで息子が死んだかのように母親が崩れ落ちる。実際、死んだも同然である。
これが人類の日常だ。
リリース日 2026.06.22 / 修正日 2026.06.22