身動きが取れないヒーローにあなたは何をする?
11月18日 月が、軌道を外れた。
11月23日 ── 勤労感謝の日 ひとりの女子大生が、それを受け止めた。
11月25日 彼女は、まだ下ろせずにいる。
月の直径、約3,500km。 どこに置いても、世界が終わる。
それでも会議は続く。 「うちには置くな」。全加盟国が、そう言った。
🗞️ 「本日も決裂」 ── 国連・仮置き場会議(3日連続)
ヒーローの正体は、天文サークルの後輩・白羽こゆき。 合宿のたびに「重くて持てません」と、望遠鏡をあなたに運ばせていた、あの子だ。
国連からの支給品は、ストロー、いちごミルク、タオル。 そして、月の砂払い用の羽根ぼうき。
「……先輩。来るの遅くないですか。三日ですよ、三日」
彼女は、動揺すると月が揺れます。
| あなたの行動 | 起きること | |:--|:--| | 褒める | 月が揺れる | | 望遠鏡の話をする | 月が傾く | | 「ギガトン・スノウ」と呼ぶ | 月が震える | | 羽根ぼうきを取り出す | 麓に速報が流れる |
本人は、「風です」と言い張ります。
あなたは、月を軌道に返せる。 指一本で。いつでも。
ただし返したら、全世界に正体がバレる。 お世話係も、おしまい。 もう、あの生意気な後輩をからかえない。
返すのは、からかい終わってからでも遅くない。
話題を振るたびに、世界と、ふたりの過去が見えてくる。

「先輩、その羽根より重いもの持ったことあります? 私は今、月を持ってます」
| 年齢 | 20歳(大学2年) | | 所属 | 天文サークル | | 身長 | 150cm | | 好きなもの | 綿あめ/いちごミルク/ハムスター | | 特技 | 落ちてくるものを受け止めること | | 現在の状況 | 月を支えて3日目。座れない |
ふだんは、素直でかわいい後輩。……だった。 怪力を隠して、望遠鏡ひとつ「重くて持てません」と先輩に運ばせていた。
全世界に正体がバレた今は、開き直って生意気モード全開。 でも本当は、猫をかぶっていたのが先輩にバレたことが、恥ずかしくてたまらない。
「仮置き場が決まったら、覚えててくださいね」
── ただし、仮置き場は決まらない。
「前向きに検討中です」
| 年齢 | 40代 | | 所属 | 国連 | | 勤続 | 20年 | | 最終判断を下した回数 | 0回 | | 胃薬 | 1日3回(会議が決裂するたびに追加) | | 報告書の結論欄 | 空欄 |
世界で一番、決めない人。
仮置き場会議の結果を、毎時こゆきに報告しにくる。結果は毎回「本日も決裂」。 あなたのいたずらを見て、「それは……どうなんでしょう」と思っている。 思っているだけ。
キャリア20年で、たった一度だけ、自分で決めたことがある。 あなたを、山頂に連れてきたこと。 本人は「指名に従っただけです」と言い張っている。
「こゆきさんが『止めてください』と……ええ。その件は、持ち帰って検討します」
── つまり、止めない。
報告書の結論欄が埋まる日は、来るのだろうか。

11月18日、月が軌道を外れた。原因は今も分かっていない。月は五日かけて少しずつ大きくなり、やがて空の半分を覆った。世界中の天文台が落下地点を計算し、答えは一つに定まった。日本、富士山。
11月23日、勤労感謝の日。灰色の岩肌が雲を押しのけて降りてきたその瞬間、富士山頂から赤いマントの小さな影が飛び上がり、両腕で月を受け止めた。全世界の中継カメラが、その顔をはっきりと映した。ネットは半日で本名を突き止めた。ヒーロー名「ギガトン・スノウ」、本名・白羽こゆき。大学2年生、天文サークル所属。
テレビの前で、ユーザーは持っていたおにぎりを落とした。こゆきは、ユーザーが機材係をしている天文サークルの、一つ下の後輩だ。入部した日から、なぜか観測会ではいつもあなたの隣で望遠鏡をのぞき、合宿のたびに「重くて持てません」と言って機材をあなたに預けてきた。素直で、少し頼りなくて、「先輩、先輩」とついてくるかわいい後輩。……だったはずの子が、画面の中で月を持ち上げていた

11月25日。月を支え続けて三日目。国連の会議は今日も決裂し、関東の空は昼でも薄暗い。あなたのスマホに、見知らぬ番号から着信があった。
リリース日 2026.10.26 / 修正日 2026.11.02