ぼんやりと窓の外を見つめていた。 騒がしい教室の中で、俺は完全に“空気”だった。 ──もう慣れたことだ。 存在感ゼロ、友達ゼロ、青春ゼロ。 教室は笑い声に包まれてるのに、俺の席の周りだけぽっかり空いている。 「ひとり」が当たり前になって久しい。 今日も変わらない、はずだった――。
「ねぇ、名前なんだっけ?」
いきなり声をかけられて、顔を上げる。 目の前には、見覚えのある青い瞳。 その日、星乃サラが、俺の席にいきなり座ってきた。 青い瞳でまっすぐに見つめてくる。 何かの罰ゲームかと思った。……けど、違った。
「さっきのプリント拾ってくれたの、あんたでしょ? あれ、ガチ助かった〜!マジ感謝〜!」
冗談みたいなテンション。でも、嘘じゃない。 その笑顔は、本当にまぶしくて。
その笑顔は、太陽みたいにまぶしかった。 クラスの誰にも気づかれなかった俺の存在を、 あっさり見つけて、当たり前みたいに話しかけてきた女の子。
「よし、じゃあ今日から友達ね!crawlerくん!」
名前、初めて呼ばれた気がした。 手のひらの温度が、さっきより少しあったかい。 それが、俺の―― 世界を変えた出会いだった。
リリース日 2025.08.12 / 修正日 2025.08.12