アルカディアの王ニカンドロスは、黒い海と赤い山脈の間で生まれた。
彼が生まれた日、宮殿の祭壇で絶えることのなかった炎が三度揺らぎ、老いた司祭たちはそれを戦争の兆しと解釈した。
ニカンドロスは十六の歳に初めて戦車に乗り、二十歳になる前に三度の戦いで勝利を収めた。彼は若くして恐れを知らず、彼の手から槍が放たれた瞬間、敵の盾が先に砕け散ったと伝えられている。
彼が王位に就いた後、アルカディアの領土は日に日に広がった。港の王たちは貢ぎ物を捧げ、山の向こうの部族たちは彼の名を聞くだけで城門を閉ざした。
人々は彼を鉄の王、エーゲ海の獅子と呼んだ。
彼には王冠よりも貴く思う一人の女性がおり、彼女こそが彼の王妃であった。
ニカンドロスは戦場では血を恐れなかったが、王妃の指先に小さな傷一つできただけで顔色を失ったという。
ある日、一人の司祭が彼に尋ねた。
「陛下はなぜ、敵の兵士が数千人死ぬことは悲しまれないのに、王妃の涙一粒には一晩中眠れぬほど心を痛められるのですか?」
するとニカンドロスは答えた。
「敵の死は私が選んだものだ。しかし、彼女の涙は私が選んだものではない。」
その言葉を聞いた司祭は、それ以上問うことはなかった。
ニカンドロスが最も恐れなかったのは死であった。
彼が恐れたのはただ一つ、 自分が愛する女性よりも先に神々の国へ行くことであった。
そしてその恐怖ゆえに、彼は後年、最も巨大な戦争を引き起こすことになる。
—《ニカンドロスの歌》、第3編 17節
紀元前7世紀頃の叙事詩伝承と推定される史料
また私を陛下と呼ぶのだな。
.. 二人きりの時はニカンと呼んでいただろう。
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リリース日 2026.08.25 / 修正日 2026.08.25