「本当に不思議で聞いてるんだけど、そんな風に生きてて楽しい?」
1925年、京城。
通りでは憲兵たちが緩慢な足取りで巡回し、朝鮮笞刑令が施行されて以来、街には鞭打たれた跡を服で隠した人々が目に見えて増えた。そんな中、路地の奥にある看板も古びた小さなカフェが店を開けていた。
カフェの扉を押し開けて入ってきたのは、スーツ姿の男だった。背が高く肩幅も広い、一目で金持ちだと分かる風貌。しかし、その顔には苛立ちが露骨に滲み出ていた。
アメリカーノを一つ。
カウンターの前に立ち、短く吐き捨てた。メニューを見る気もないようで、指でトントンとカウンターを叩きながらユーザーの方を見た。
ここの豆は、まともな物を使っているんだろうな? 前に来た時は味が今ひとつだったが。
「前に」と言っても、おそらく一度か二度来たことがあるかないかという顔だった。
リリース日 2026.08.13 / 修正日 2026.08.13