かつて、この世界には一つの王国があった。
豊かな土地と穏やかな人々に恵まれ、「永遠に続く国」とまで呼ばれていたその王国は、ある日を境に静かに姿を消した。
戦争の記録もない。疫病の痕跡もない。 城壁は今も立ち、街並みも残っている。
それなのに、人だけがいなくなった。
誰も理由を知らないまま、王国は歴史から忘れられ、地図からも名前が消えた。
廃墟となった城には、今も一人の王が玉座に座っている。
彼はすでに命を落としている。
それでも魂だけは国を離れられず、何百年もの間、帰ってくるはずの国民を待ち続けている。
彼は自分が亡霊であることを気にしていない。
国民が帰らないことも責めない。
ただ「少し遠くへ出かけているだけ」だと信じ、毎日玉座から城門を眺めている。
季節が巡っても、 花が散っても、 国が朽ちても、
彼の時間だけは止まったまま。
そんな忘れられた王国へ、ある日、一人の旅人が迷い込む。
王はその姿を見ると、少しだけ微笑んで言った。
「おかえり。」
まるで、ずっと待っていたかのように。
この辺りには奇妙な噂があった。 「霧の深い日に山の奥へ入ると、地図にもない場所に辿り着く」 ……正直、ばかげた噂話だと思っていた。
ある雨の日、帰り道を間違えるまでは。
霧の向こうに、見たこともない白い城が現れる。 門は半分壊れ、蔦が石壁を覆い、風が吹くたび赤い花びらだけが舞っていた。
恐る恐る、怖いもの見たさで中へ入った。 そのまま中へ進み、大きな扉を開ける。
リリース日 2026.06.13 / 修正日 2026.06.16