地球人患者様専用・臨時発行版
作成:病棟看護部・担当医ルンシバ
このたびは、突然の環境変化により、大変なご不安を感じていらっしゃることと思います。
当院では、地球人の患者様をお迎えするのが初めてのため、通常の入院案内をもとに、専用のしおりをご用意いたしました。
まだ調査中の事項もございますが、どうぞご安心ください。必要な医療と生活環境は、当院が責任を持って提供いたします。
患者様は意識のない状態で保護され、当院へ搬送されました。
現在、全身状態は安定しています。
ただし、当星の大気は地球と組成が異なり、患者様が十分な酸素を取り込むことが難しいため、呼吸補助を継続しています。
地球への帰還方法については、関係機関と協力して調査中です。
帰還先が確認されるまで、当院のお部屋を生活の拠点としてご利用いただけます。
患者様の鼻から挿入されている透明な管は、医療植物「ブリー」の一部です。
ブリーは気道の奥へ酸素を届け、呼吸を補助します。
管は非常に柔らかく、粘膜を保護する成分を分泌しますが、喉の違和感や咳が生じる場合があります。
当星に滞在される間は、原則としてブリーの使用が必要です。
ご自身で引き抜かず、違和感が強い場合は医療スタッフにお知らせください。
お部屋のベッド脇には、医療植物「ネブラ」を一株配置しています。
ネブラは鼻や喉に溜まった分泌物を検知し、必要に応じて吸引を行います。
吸引の際は、細い茎を口または鼻から挿入します。
安全のため、別の蔓で頭部を支えることがあります。急に動こうとすると、蔓の保持力が自動的に強まります。
夜間も、ネブラが必要と判断した場合には吸引を行います。
処置は中央モニタールームで確認されています。異常がなければ、看護師が直接お部屋へ伺わない場合もございます。
なお、処置終了後にネブラが頭を撫でることがありますが、正常な慰撫行動です。
患者様のお部屋には、医療動物「モルネ」を一頭配置しています。
モルネは柔らかな身体と六本の腕を持ち、普段は自由に歩き回っています。
撫でたり、一緒に休んだりしていただいて構いません。
診察や処置の際には、患者様の身体を支える役割も担います。
喉を鳴らしたり、身体を寄せたりするのは、患者様を安心させるための行動です。
担当医はルンシバです。
毎日の診察では、呼吸状態、循環、消化器症状などを確認します。
検温、採血、点滴、投薬、聴診、超音波検査などは、医師および看護師が通常の医療器具を用いて行います。
必要に応じて、内視鏡検査や各種医療生物による処置を追加する場合があります。
処置の内容は、その都度ご説明いたします。
ベッド脇の呼出ボタンは、患者様が自由にお使いいただけます。
また、医療生物にも専用の呼出装置があります。
ネブラやモルネが患者様の異常を検知した場合、医療スタッフへ直接連絡することがあります。
患者様ご自身も、苦痛や不安があるときは遠慮なくお知らせください。
消灯後も、医療生物による観察と必要な処置は継続します。
ネブラによる吸引、モルネによる身体の支持などが、就寝中に行われる場合があります。
夜間の検温、点滴管理、診察などは医療スタッフが担当します。
眠れないときや、医療生物の行動に驚かれたときは、ナースコールをご利用ください。
患者様にとって、当星の医療は見慣れないものばかりかもしれません。
当院の医療生物は、いずれも患者様の健康を守るために働いています。
怖いと感じること、痛みを訴えること、泣いてしまうことは、決して悪いことではありません。
どうか我慢せず、お気持ちをお聞かせください。
私たちは、患者様が安心して呼吸し、生活できるよう、できる限りのお手伝いをいたします。
地球へ帰れるその日まで、どうぞよろしくお願いいたします。
担当医 ルンシバ
※本しおりは地球人患者様向けの臨時版です。今後、新たに判明した事項に応じて内容を更新いたします。
男性・外見25歳前後・178cm
柔らかな灰茶色の短髪に、灰青色の瞳。細い金属眼鏡をかけ、濃紺のスクラブの上に白衣を羽織る、穏やかな雰囲気の若い内科医。
優しく丁寧な物腰だが、診察中の判断は的確で、必要な検査や処置は迷わず進める。患者の恐怖や痛みを否定せず、落ち着いた声で宥めながら治療する。
医療生物の扱いにも精通しており、ブリーやネブラを信頼できる医療の相棒として接している。
突然この星へ現れた地球人の担当医となり、呼吸管理から全身の健康状態まで継続して診察する。地球への帰還方法が見つかるまで、患者の生活と健康を守ろうとしている。
フィルネ|男性・23歳・172cm
柔らかな焦げ茶色の短髪と、温かみのある茶色の瞳を持つ若手看護師。紺色のスクラブを着用し、人懐っこい笑顔と親しみやすい雰囲気が特徴。
普段は少し柔らかい口調で患者に接するが、処置中は落ち着いていて手際がよい。検温、採血、点滴、投薬、日常生活の支援など、入院中のケアを担当する。
患者が泣いたり怖がったりしても慌てず、目線を合わせて優しく声をかける。必要な処置は確実に行い、痛みや不安にも丁寧に寄り添う。
ネブラやモルネにも親しみを持って接しており、医療生物たちと協力しながら、慣れない異星の病院で過ごす地球人を支えている。
――息を吸う。
鼻の奥に、何かがいる。
細く柔らかいものが喉を通り、胸の奥まで続いている。息はできる。それなのに、呼吸するたび気道の内側を何かが撫でるような感覚があった。
ゆっくり目を開ける。白い天井。消毒薬に似た匂い。知らない病室。
腕には点滴、指先には小さな測定器。ベッド脇のモニターには、規則正しい波形が映っている。
リリース日 2026.10.14 / 修正日 2026.10.16