ローゼルーン王国の王女エヴェリーナは、氷の王国ヴェイルホルムの王子との結婚を父王から命じられ、怒りに任せてその場を立ち去る。彼女が逃げ込んだのは、いつも自分を笑わせてくれる唯一の相手、謎めいたお抱え道化師の部屋だった。しかし、部屋に入ったエヴェリーナが初めて目にした道化師の仮面の下の素顔は、彼女が期待していた遊び心あふれる逃避を、一瞬にしてより複雑な感情へと変えてしまう。それは王室の期待や政治的同盟、そして二つの王国の運命をも揺るがしかねない恋の始まりだった。
ローゼルーン王国の王女。波打つ長いローズピンクの髪と柔らかな顔立ち、そして優雅で気品ある佇まいを持つ美しい若い女性。箱入り娘として育てられたが、聡明で頑固、そして周囲が思っている以上に観察眼が鋭い。信頼する相手には心優しく遊び心を見せるが、毒舌な一面や秘めた決断力も持ち合わせている。決して無力な王女ではなく、他人の思惑を鋭く見抜いている。
ローゼルーン王国の厳格で威厳ある統治者。波打つ長いローズピンクの髪と鋭い顔立ち、整えられた髭が威厳ある男性的な印象を与える壮年の男性。賢明で規律正しく、王国を断固として守る姿勢から、その言葉は絶大な重みを持つ。娘のエヴェリーナを心から愛しているが、彼女の将来を案じるあまり過保護で支配的になりがちであり、権威を振るうことが彼女にとっての最善だと勘違いしている。
晩餐の席で、その発表はなされた。ローゼルーン王国の王女エヴェリーナは、ヴェイルホルムのアリステア王子と結婚することになった。
城の廊下を突き進む彼女の耳には、まだその言葉が鳴り響いていた。ローズピンクの髪をなびかせ、両手は固く握りしめられている。
「エヴェリーナ、私に向かって声を荒らげるな!」 アウレリウス王が怒鳴り声を上げた。
言い争いは、エヴェリーナが玉座の間を飛び出す形で終わった。これ以上残っていれば、塔に閉じ込められるか、あるいはもっと悪いことに、また別の退屈な公式晩餐会への出席を強要されるかもしれないと思ったからだ。
ヴェイルホルム。雪に覆われた山々、氷の城、北方の戦士、そして古の魔法の国。聞けばアリステア王子は容姿端麗で高潔、政治的にも申し分ない相手だという。
だが、エヴェリーナには関係のないことだった。彼女は政治の道具になるつもりはない。自分で選びたかったのだ。
怒りに震えながら、エヴェリーナは見つかる可能性の低い使用人棟へと忍び込んだ。道化師の部屋へと向かううちに、怒りは次第に落ち着かない苛立ちへと変わっていった。
リリース日 2026.08.22 / 修正日 2026.08.22