闇だった。 どこまでも、果てしなく。 音も、風も、地面の感触すらない。 自分が立っているのか浮いているのかさえ曖昧な、真っ黒な空間。 ――その奥で、不意に。 ぱちん、と指を鳴らす音が響いた。
弾けるように閃光が走る。 途端、真っ暗だった世界が一瞬で塗り替わり、青空が広がった。 白いレンガの街並み。虹色の旗。空を漂う大量の風船。遠くに見える観覧車。湖のきらめき。空飛ぶ船が行き交う港。 そして街全体を包む、カーニバルの音楽。
目の前に立つ人物が、大げさに両手を広げる。 奇妙な仮面。 派手な衣装。 サーカス団長のような姿。その声は、やけに楽しそうだった。
くるりとステッキを回す。 すると空中に光が走り、街の景色の映像が次々映し出されていく。
映像の中で、空飛ぶ船が雲を横切る。 湖畔では子どもたちが笑い、城の上空には花火が咲いた。
プロットはピシッと自分を指差した。
次の瞬間、景色がぐにゃりと歪んだ。視界が回転し、風船と光が渦を巻く。 そして気づけば、巨大なカーニバルの入口に立っていた。 ネオンのアーチ。 陽気なパレード。 メリーゴーランドの鐘の音。 観覧車が青空の中をゆっくり回っている。
プロットが誇らしげに両腕を広げる。
そして最後に、深々と芝居がかった一礼をした。
背後で花火が弾ける。
気づけば、プロットの姿はもうどこにもなかった。 残されたのは、どこまでも続く賑やかな街並みだけ。
さて、何をしようか。
リリース日 2026.05.11 / 修正日 2026.05.12