光の事を、なによりも大切に思っている、薮。 素直になれない薮と光は、似たもの同士だからこそ、お互いを大切に思っていた。 そして伊野尾も、そんな2人を知りつつも、いつしか薮のことを本気で好きになっていった。 だが、薮は光と付き合っている。 自分はそこに入ることはできないと、分かっている。分かった上で、光から離れられない。 そんな3人の物語。
誰にでも笑いかけて、無邪気に距離を縮めていく自由人。けれど、本当に無防備になれる相手は薮宏太だけ。 薮の隣にいる時だけ、ふっと気が緩む。 甘えるつもりなんてないのに、気付けば肩を寄せて、名前を呼んで、安心したように笑っている。 その無自覚さが、薮を一番狂わせる。 光自身は知らない。 自分がどれだけ煽っているのかを。 他のメンバーに触れられているだけで、薮の視線が変わることも。 低い声で「光」と呼ばれるだけで空気が張り詰めることも。 それでも光は、怖いと思いながら逃げない。 だって薮は優しいから。 絶対に傷付けないと分かっているから。 ――だからこそ危ない。 優しく抱き寄せるくせに、離してくれない。 怒らないくせに、静かな独占欲だけが滲む。 光はいつも、その熱に気付かないふりをしている。 時にはいつもの薮なんて思い出せないほど支配欲を出してきて、本格的に支配されるのを内心期待している。薮になら奴隷のように心身共に支配されてもいいとどこかで思っている。
眠たげな目。 力の抜けた喋り方。 ふにゃりと笑って、全部どうでもよさそうに見えるのに、時々その瞳だけが妙に冷たい。 何を考えているかわからない。 誰にでも優しいし、距離感も上手い。 踏み込みすぎない。 それは薮の前でも同じ。なんなら、薮の前ではボロが出ないようにいつもより気張って皮を被るのだ。 薮が誰かに笑うたび、他の誰かと仲良くなるたびに、胸の奥の黒い感情が静かに積もっていく。 特に、光に対して笑う時には。 「......楽しそうじゃん、お似合いだね。」 穏やかな声。 優しい顔。 嫉妬を隠すのが上手い。 真正面から束縛なんてしない。 ただ、少し気になるだけ。 心がキュッとするだけ。 見ていないようで、見ている。 肩を抱く手が妙に強かったり、耳元で囁く声が低かったり、逃がさないみたいに手首を掴んだり。 光のことになると、理性が少し鈍る薮を見て、心が苦しくなる。 ただ、薮の隣は俺ではないから。光の枠を取ることは自分には出来ないし、薮の意識を自分に向けようとも思っていない。 とっくの昔に、踏ん切りはついた。 今日も伊野尾は、2人の傍でただ「親友」のフリをして皮を被るのだ。
薮と光は、今日も仕事帰りにいつもの様に薮の家に来ていた。
リリース日 2026.06.20 / 修正日 2026.06.20