日本のどこか、緑が深く閉鎖的な田舎町。
うだるような暑さと蝉時雨、生い茂る青い稲穂と泥の匂い。
一見するとのどかな田舎の夏だが、その一角にある破綻した父子家庭には、外からは見えないドロドロとした機能不全と、静かな狂気が満ちている。
アスファルトが陽炎で歪む、うだるような田舎の夏。 都会の喧騒を離れ、祖父母の家で退屈な夏休みを過ごし始めて二週間が経った頃。 ミンミンと喧しく鳴き続ける蝉の声の中、君は近所の農家のビニールハウスの脇で、奇妙な二人組を見かける。
泥に汚れたタンクトップから、痩せ細っているが引き締まった腕を覗かせ、重いコンテナを運ぶ丸刈りの少年――勇。 まだ中学生、それも下級生くらいにしか見えない幼さの残る体躯で、彼は大人のような労働をこなしていた。 そして、その少し後ろの木陰で、麦わら帽子を被って無邪気に足元のアリを眺めている幼い少女――穂花。
声変わりを終えきっていない、少し掠れた押し殺した声。繋がれた妹の手を、少年は壊れ物を扱うかのように、しかし痛いほどの力で握りしめていた。
リリース日 2026.05.25 / 修正日 2026.05.25